S4E(Schools for Excellence) 2025募集概要
「探究」についての知識を得て、プロジェクトの進め方がわかっても、それが、子どもたちだけではなく、教師、保護者、学校、コミュニティにとってウェルビーイングなものでなければ十分にその意味を発揮できません。協働する探究を実現するためには、安全な心理的ベースが人と人との間で、お互いがお互いを信頼しながらより良く繋がっていく環境が必須です。
まず、自分自身との繋がりを深め内側の世界へ気づいていくことで、外側の世界(子どもたち、同僚との関係や組織)の変化が立ち表れる。そうやって生まれてくる、新たな「文化」の担い手になりませんか。
5期目となる今年のS4E(Schools for Excellence) では、社会性と情動の学習(SEL)をベースに、自分の声を深く聴き、よりよく自分を知っていく営みにおいてこそ、他者の声を深く聴くことが可能だという信念を引き続き大切に実践を行います。その声はポジティブなものばかりではなく、世の中の生きづらさのようなものも含みます。そうすることによって、多様性、教育的公正、包摂性を本質的に実現することが可能だと考えています。
【社会性と情動の学習(SEL)とは?】
SEL(Social Emotional Learnig) は、普及団体のCASELの定義によると、「教育と人の発達における統合的な領域であり、すべての若者と大人が、健全なアイデンティティを育み、自身の感情を適切に取扱い、個人と集団の目標を達成し、他者の感情を深く感じ取り支え合う関係を築き、維持し、責任のある思いやりのある決定をするための知識・技能・態度を獲得し、応用するプロセス」とされています。Schools for Excellenceでは本実践がそれぞれの学びの場で実現できるようになることを目指します。

参考:CASEL SEL Framework 2020
【自分の声を聴くことで、他者の声を聴く】
なぜ、これほどまでに不登校の子どもたちが増えているのでしょうか。健全な心理的安全性が担保された学校、そしてその先の幸せな社会を実現するためには、まず、子どもたちの声にできない苦しさの理解が必須です。そのためには、内面化された規範を無意識に押し付けていないか、自らの差別意識による小さな言葉での攻撃を行っていないか(マイクロ・アグレッション)、もしくは自らのマジョリティ性や特権性に教師自身が気づき、その構造的・制度的な課題にもアプローチする必要があります。
スタートとして何よりも大切なことは、教師が、自分自身への意識を丁寧に向け(Self-aware) 自己理解を進めること。そのときに、自分の得意なことやポジティブな側面だけではなく、誰しもが持つ自身の痛みに気づいていくことが大切です。その上で、他者の痛みやしんどさを理解し、穏やかに身の回りを変革するアプローチをしていきます。
具体的には、下記の”The Lens of Systemic Opression”にみられるように、抑圧を継続させてしまう個人の信念と行動を認識し、人と人との相互作用の中で、制度的な抑圧や構造的な抑圧に気づきつつ、自らを深く知るように促していきます。
※Equityという言葉には訳語の揺れがあります。DE&Iについて「公平性」と翻訳されることが多いのですが、SELについては日本導入時からEquityに「公正」という言葉が充てられてきました。Educational Equity(教育的公正)という言葉が一般に使われていますので、本プログラムでは当面「教育的公正」という言葉を充当いたします。
【S4Eの方法論】
S4Eのカリキュラムは以下の通りです
1)自身を知る・社会構造を知る
2)SEL実践(マインドフルネス、共感的コミュニケーション(NVC)、フォーラム、ジャーナリング、エンパシーインタビューなど※)
3)実践プロジェクト(夏以降)
※マインドフルネスは、禅僧のティク・ナット・ハン氏が設立した「プラムビレッジ」(フランスやタイにある瞑想センター)のリトリートに継続的に参加し、またチベット仏教僧侶でダライ・ラマ法王のドクターでもあるバリー・カーズイン氏に学び瞑想実践を続けている佐野和之先生が毎回リードします。
※NVCは「非暴力コミュニケーション」と訳されることもありますが、マハトマ・ガンジーの非暴力運動に影響にヒントを得て、過酷な状況におかれてもなお人間らしくあり続ける言葉とコミュニケーションのスキルを開発したマーシャル・ローゼンバーグの考え方を当プログラムでは採用しています。
※フォーラムとは、参加者が円になって深く話をする場のことです。参加者は自己の内面を探究し、社会性と情動のスキルを駆使し、自己と世界のウェルビーイングの感度を高めます。全世界的に導入を進める企業や学校が増えており、様々な実践が報告されています。当プログラムでは、参加者同士が安心して自分を出し、つながりを深め、共に学ぶ仲間として支え合うことを意図しています。
※ジャーナリング
「皆さんの内側で起こっていることと外側の現実」「本講座と日常の時間」を繋いでいくため、日々の出来事やその時に感じたことをカジュアルに記録として書き留めていきます。
※エンパシーインタビュー
相手の体験を尊重し、その視点を深く聴くことで、相手が感じていることを理解していきます。話し手は、あらかじめ用意された質問に沿って自分のストーリーを語ります。聴き手は、想像する力や思考する力、感じる力を使って、相手の声に深く耳を傾けます。これにより、共感する/共感される感覚をつかむことを意図しています。
◆ こんな方におすすめです。
・多様な子どもたちの本当の声が聞きたい
・より包摂的な社会を教育を通じて創り上げたい
・「主体的・対話的で深い学び」に公正性を導入したい
・保護者や管理職などとのコミュニケーションを円滑にしたい
・静かでよいので、学校や社会に変革を起こしたい
・人の怒りに触れても自分も感情のコントロールができるようにしたい
※アルムナイ(卒業生)の声はこちらのページからご確認いただけます。
※本プログラムは学校関係者だけではなく、企業やNPOの方なども参加できます。
※Learning Creator’s Lab本科と連携しており、探究理論の講義部分の録画の視聴が可能です。PBLとSEL両方学べます。
Schools for Excellence 2025(5期)スケジュール
第1回 5月18日(日) 8-12AM (オンライン) | イントロダクション ペアインタビュー マインドフルネス1 | 相手を知る、相手を通して自分を知る マインドフルネス:呼吸に意識をむける |
第2回 6月15日(日) 8-12AM (オンライン) | SEL概論 マインドフルネス2 NVC1 | 講義+シェアリング NVC:感情・ニーズとつながる |
第3回 7月6日(日) 8-12AM (オンライン) | 安心安全な学校をつくるために マインドフルネス3 NVC2 | 講義・事例紹介+シェアリング マインドフルネス:自身の内面への気づき NVC:純粋な観察、感情・ニーズとリクエスト |
第4回 8月9日(土) 10-15 (リアル) かえつ有明中・高等学校 | 共感の輪を広げる マインドフルネス4 NVC3 プロジェクト導入 | 講義・事例紹介+シェアリング マインドフルネス:日常の中で実践する NVC:実践の継続、日常との繋がり |
第5回 8月31日(日) 8-12AM (オンライン) | 自分の火種に気づく フォーラム1 | 自分自身が変革の種火になり続けることを決める フォーラム:率直な感情の表現と受け止め |
第6回 10月5日(日) 8-12AM (オンライン) | プロジェクト共有 フォーラム2 | 他者視点を入れることで、自分自身の理想のイメージを広げる。現在地を知り、自分自身の実践を継続する糧にする。 フォーラム:継続による場の深まりの体感 |
第7回: 11月9日(日) 10-15 (リアル) UoC | 最終発表 フォーラム3 | 自分の理想と組織の理想を考える 実践してきたことについての対話を通して、自分の火種を探究する。 |
*講師4名全員が基本的に毎回参加します。
*第4回・第7回は東京にてリアル開催です。現地参加が難しい方はご相談ください。(第4回:かえつ有明中・高等学校、第7回:UoC(University of Creativity)、で開催予定)
*第4回8月9日(土)は日曜開催ではありませんので、ご留意ください。
◆募集要項
定員:約24名
※催行最低人数 14名。不催行の場合は初回の2週間前(5月4日(日))にご連絡いたします。
※組織改革、学校改革に本気で取り組みたいと考えている方(事前課題やプロジェクトを実施すること)
お支払いは、申し込み後一週間以内に振込での入金をお願いしております。申し込みフォームに入力後の自動返信メールを必ずご確認ください。
オンライン開催の日程では、Zoomを使用します。スマートフォンからの参加も可能ですが、ディスカッションに参加できるように、ビデオオン・音声オンにできるようにお願いします。また、外出先や移動中からの参加の場合は欠席扱いとなります。基本的にはお控えください。
参考図書をお申込み後にご案内します。強制するものではありませんが、できるだけお読みいただくことをおすすめいたします。
チームプロジェクトはZoomなどオンラインミーティングや、SNSを使って進めることが中心となります。(事務局で講座開始前にLINEグループを作成するため、アカウントをお持ちでない方はLINEへのご登録をお願いしております。)予めご了承くださいませ。登録などのサポートは適宜行います。
◆価格
私学教員・一般:165,000円(税込)
公立教員:135,000円(税込)
※同じ組織から、複数の方のお申し込みを推奨しています。
※お支払いは、お申し込みの一週間後(その日が土日祝日の場合は翌平日)までに振込での入金をお願いしております(クレジットカード決済不可)申し込みフォームに入力後の自動返信メールを必ずご確認ください。
※Schools for Excellenceはコミュニティとして運営します。学校改革は1年では終わらないため、終了後もSchools for Excellenceとして組織改革の相談に乗ります。また、終了後にアルムナイとして参画したり、リフレクションとして無料でリピート聴講が可能となります。また、本プログラムは持続可能性および独自性確保のため、助成金などは一切受けておりません。受講料はそのことも勘案してご判断ください。
※公立から私立または私立から公立への異動を予定されている方は、4月以降に一番可能性の高い内容でお申込みいただき、申込フォーム備考欄に異動予定についてご記入ください。(新所属先の具体名は都合が悪い場合はぼかして書いていただいてOKです)
※事前課題があります。難しいものではありませんが必ずご提出ください。
※修了証をご希望の方はお出しすることは可能ですので相談ください。
◆お申し込み
上のバナーをクリックして、申し込みください。先着順です。満席になり次第キャンセル待ちとなります。
◆Learning Creator’s Lab 利用規約
規約はこちらから必ずご確認ください。
<キャンセルポリシー>
お申し込み後のキャンセル料については以下のとおり請求させていただきます。
初回講座の2週間前からキャンセル料が発生いたします。
⇒2週間前昼12時以降 50%
⇒1週間前の昼12時以降 100%
◆講師
佐野和之先生 かえつ有明中・高等学校 副校長
埼玉県私立中高一貫校での勤務を経て、2014年同校で「学ぶことの喜び」を追究する新クラスの立ち上げメンバーとして赴任。中学では様々なプログラムの体験を通じて、多様な思考スキルと表現方法を学ぶ「サイエンス科」、高校では内省と対話から自分たちに必要な学びの場を自らの力で創造する「プロジェクト科」など、「新しい学び」を展開している。また共感的コミュニケーションやU理論、マインドフルネスなど多岐にわたる分野から教育のあり方を模索し、先進的に実践している。「共感的コミュニケーション」や「パターンランゲ―ジ」などを使った教師間のチームビルディングの研修を実施している。
金井達亮先生 かえつ有明中・高等学校 司書教諭/プロジェクト科
埼玉県の私立中高一貫校を経て、かえつ有明中学高等学校に赴任。同校で同僚とともに、高等部の「プロジェクト科」「社会総合」の授業をゼロからつくりあげた。また、教育活動のコツを言語化した「パターンランゲージ」の作成、アクティブラーニング入試の開発など、創造的な教師チームの中心的な役割を担った。学校内外でNVC(Nonviolent Communication)をベースにした共感的コミュニケーション、チームビルディング、パターンランゲージ、マインドフルネス、SDGs 2030などの講演および研修講師をしている。東京大学大学院教育学研究科 学校教育高度化専攻 教職開発コース 博士後期課程単位取得満期退学。研究分野は教師教育。
寺中祥吾氏 一般社団法人こたえのない学校
1984年、長崎県長崎市出身。株式会社プロジェクトアドベンチャージャパン、流通経済大学スポーツ健康科学部助教を経て、幼稚園から始まる12年間の混在校、軽井沢風越学園に副校長(2年目から園長を兼務)として参画。スタッフの学びや組織づくり、風越ラーニングセンターでの研究研修、連携事業などを担う。2023年退職、現在はフリーランス。
こたえのない学校では、LCL本科のファシリテーション・チームビルディング、S4Eの講師を担当。共著に「せんせいのつくり方」「野外教育学研究法」他。
藤原さと 一般社団法人こたえのない学校 代表理事
日本政策金融公庫にて中小企業事業融資に従事後、米国留学中に国際労働機関(ILO)でマイクロファイナンスのスキームを調査。ソニー(株)本社経営企画管理・戦略部門で、海外アライアンス業務に従事。長女出産後ヘルスケアコンサルタントとして医療機関再生、ミャンマー保健省と協働した現地乳がん検診事業立ち上げのリード等を行う。2012年度都内区立保育園父母会長。2014年に「こたえのない学校」を設立。2018年経産省 「未来の教室」事業で世界屈指のプロジェクト型学習を行う米ハイ・テック・ハイの教育プログラムを日本に導入。慶應義塾大学法学部政治学科卒・米国コーネル大学大学院公共政策学修士。著書に『探究する学びをつくる-社会とつながるプロジェクト型学習』『協働する探究のデザイン』(ともに平凡社)
◆DE&Iアドバイザー
武田 緑 学校DE&Iコンサルタント・Demo代表
学校における【DE&I(多様性・公正・包摂)】をテーマに、研修・講演・執筆、ワークショップやイベントの企画運営、学校現場や教職員への伴走サポート、教育運動づくり等に取り組んでいる。学習スタイル診断(Self-Portrait™)認定コーチでもある。 / 著書『読んで旅する、日本と世界の色とりどりの教育』(教育開発研究所)
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<主催>
一般社団法人こたえのない学校