オランダ・フィンランド・アメリカから学ぶ教育の未来 当日の質問に対する回答(1)

投稿日: カテゴリー: お知らせ

先月Learning Creator’s Labのオープンラボとして、「オランダ・フィンランド・アメリカから学ぶ教育の未来」を開催させていただきました。

当日、みなさんからの質問に対してお返事をできませんでしたので、いただいたご質問に対してこちらで回答していきたいと思います。かなり長くなってしまいましたので、下記のように2回に分けてご紹介したいと思います。本日は各国の教育に対する質問について回答します。

1)各国の教育に対するご質問

2)日本の教育の未来に対するご質問

 

 

Q:梅田さんの話し切れなかったフィンランドのお話が聞きたいです!また、国家戦略の部分をさわりだけでも聞きたいです

梅田:当日質疑応答でもお答えましたが、フィンランドの国家戦略のひとつとして挙げられるものはイノベーションの創出です。フィンランドは公教育から大学までの教育を国家戦略に対する戦術として教育システムを駆動させています。また、3月16日 フィンランドに学ぶ教育の未来でもお話しいたします。http://finland-edu.peatix.com

 

Q:フィンランドには塾はあるのでしょうか?他国の有名大学に行ったり、ビジネスで大成功していますか?アングリーバード他は有名ですが、教育でさわがれるほどには…な気がします。

梅田:日本では「フィンランドに塾はない」という話題一辺倒ですが、実はあります。ただし市場としては日本のそれに比べてはるかに小さなものです。もちろん、他国大学へ留学もしていますし、たくさんのスタートアップが成功しています。(同時にたくさんの失敗も横たわっています)ちなみに、アメリカ西海岸とは趣を異とし、スタートアップの新しい祭典のカタチを提示するSlush。日本でも2016年に始まり注目を集めていますが、実はあれ、フィンランド発のムーブメントなんですよ。

 

Q:フィンランド・オランダの小学生の学びはすばらしいとおもいました。でも、彼らが大人になったときに他の先進国の人に比べて経済的にも豊かに生活できているかどうかについては、どうなのでしょう?”

梅田:一般的には、十分経済的に豊かな生活をすごしています。そもそも「豊か」とは何かを考える必要があるかもしれません。彼らは何よりも幸せ(well-being)を重視しています。その上で適度に物質的、経済的な豊かさを追求する姿勢は、日本も参考になると考えています。また今の子供たちが成長したあとの世界では、現在の先進諸国が経済的に豊かであり続けているのかでしょうか?興味深い問いですね。

原田:オランダについて、単純にデータだけで判断することはできませんが、IMFが発表している「1人当たりのGDP」の2016年のデータは、オランダは14位、日本は22位です。オランダは経済生産性は高いと言われていますし、私自身、オランダに滞在してそのように感じました。とにかく働く時間が短く、しかし景気は良いそうです。また、梅田さんもおっしゃっていますが、「豊か」とは何か、ということも考える必要があります。私が出会ったオランダの方々から感じるのは、あまり物質的なモノに欲がなく、家族との時間や自分の趣味などを大切にしているな、と感じました。

 

Q:オランダ教育の自由が実現した根本的な要因は?オランダの思想?なぜ変革が実現したのでしょう?

原田:ポルダーモデルという、お互いの利害を全部出し合い、皆が納得する第3の案を出していくという話をさせてもらいましたが、古くから、洪水によって度々被害を受けた国を立て直すために、皆が納得するまで話し合うという文化が根付いていたからではないかと感じます。オランダの教育の自由が成立するまで、100年近い期間をかけて話し合い続けたということですから、対話文化があるというのが大きいのではないでしょうか。

 

Q:イエナプランについて大部分のことは自由なのだと思うのですが、何か要となる、共有されているルール、規範はありますか?

原田:イエナプランスクールでは、子どもの選択を大切にしつつも、協働することも大切にしています。子どもが他の子どもたちや教師と対話し、相手のことも尊重できること、良い共同体になるために必要なことは大切にされ、それが20の原則に表れているのではないかと思います。

甲斐崎:規範ではないですが、原田さんと同様「20の原則」です。

 

Q:なぜイエナプランは3%のみの浸透なのでしょうか? けっきょくマジョリティは受験が心配なのでしょうか?

原田:イエナプランスクールだけでなく、オランダの学校が全体的に、民主的で子どもを中心とした学校であるというのが理由としてあるのではないかと思います。何人かの保護者の方がおっしゃっていたのは、特にイエナプランスクールに通わせたかったわけではなく、いくつかの学校を見学したら、今通っているイエナプランスクールが一番雰囲気が良かったから選んだ、といったことでした。また、イエナプランは教師をするのが難しいと言われます。ですので、なかなか広げることも難しいのではないかと思います。

甲斐崎:他の学校も保護者のニーズに十分応えられているからです。逆に言えば、ニーズの数、種類だけ学校があるということで、学校が合わないという不満は少ないということです(日本には学区があって学校を選べない自治体がほとんど)。マジョリティ、マイノリティという多寡の問題ではなく、適「校」適所だということです。ちなみに、受験のことを考えて学校を選んでいる保護者は少ないと私は思います。というかそういう保護者には出会わなかったです。子どもの個性や学びのスタイルを考えて、それに合う学校を選んでいるのがほとんどだと思います。

 

Q:オランダイエナプランについてとても理想的な学びの場だと思いました。一方で課題はあるのでしょうか。

原田:オランダでもよく言われていることなのですが、イエナプランの理念を深く理解し体現できる教師がなかなかいないというのが課題のようです。また、日本で実践していくときの課題は、学習指導要領をどのようにクリアしていくか、ということも挙げられるでしょう。

甲斐崎:原田さんと同様に、教師の質の維持はとても難しいと思います。良質な教員研修をしっかりとしたビジョンをもって持続的に行うことが必要で、それは校長のリーダーシップに大きく影響されます。各グループリーダーに任されている部分が多いのだけど、ビジョンを共有し、協働していくチームとなることが求められていくと思います。実践するにあたり、制度的なものがまず壁になることでしょう。教科制、学年・学級編成、教科書等、縛りは強いです。日本の教育制度の中でどうイエナプランを実施していくか、考えていかないといけないと思います。

 

Q:イエナプランの”コアになる価値”は現場でどうつくられていくのでしょうか?

原田:教員同士がとにかくよく話します。月に1度のスタディーデイのような研修でも、学校の理念について対話することもありますし、毎日の中では、昼休みは先生たち全員が集まってゆっくり話をしています。(この間、保護者が子どもたちを見ています。)こちらも、対話文化が生きているな、と感じます。

 

Q:イエナプランのブロック・アワーではどういう課題にそれぞれ取り組むのか。探究する課題はどのように設定し、進ちょくの管理や評価はどうしているのでしょうか?

原田:学校によって少し違いましたが、ブロックアワーでは、言葉と計算を中心にやっていました。週の課題をテキストのページで示す学校もあれば、iPadのアプリで示すところもありました。それを教師が確認している学校もあれば、全く見ない学校もありました。

甲斐崎:私の参観した学校では、ブロックアワーではスペリングと算数が中心でした。必修課題が示され、それをどう週の中で取り組むかは子どもに任されている学校もあれば、1時間ごとにきっちりとやることが決められている学校もありました。どの学校も、必修の課題が終われば、自分で設定した課題に取り組むことができます。前記の学校では、週の初めに必修課題をさっと終わらせ、後半は自分がやりたい課題や探究に取り組んでいる子どもが多かったです。必修の課題はノートやプリントで提出され、グループリーダーがチェックをして返却し、ポートフォリオにして保管していました。ワールドオリエンテーションの課題は、全校統一の課題が提示されます。それを各クラスでどう取り組むかは任されています。だいたいのクラスでは、イメージマップを使い、課題の分析と整理を行い、各自何に取り組むか決めているようでした。進捗の管理は個人やグループへのカンファランスによって行います。一斉指導ではないので、かなり深く関わることができます。評価は自己評価、グループリーダーは良きフィードバッカーという存在です。ここらへんは日本と変わらないでしょう。

 

Q:オープンダイアローグのおすすめ本はありますか?(入門本を教えて下さい)

原田:オープンダイアローグに関する書籍は何冊か出版されており、今後も出版されると思いますが、今のところメインはこの2冊だと思います。

『オープンダイアローグとは何か』斎藤環(医学書院,2015)

『オープンダイアローグ』ヤーコ・セイックラ、トム・エーリク・アーンキル(日本評論社,2016)

入門としては1つめの斎藤環さんのほうだと思います。斎藤さんの解説とオープンダイアローグ第一人者のヤーコ・セイックラさんの論文が3本収録されています。

 

Q:探究・ナラティブの構築・対話・「デザイン」のアウトプットのツールとして、どの程度言語以外の表現(絵・写真・映像・音楽・プログラミングetc.)が取り入れられていますか?それらの表現の技術習得はどの程度重視されていますか?

梅田:ポートフォリオ教育を採用している学校もあり、その中で横断的かつ時系列的に美術、音楽を組入れているケースもあります。しかし講演時に申し上げたように採用している学校もあるし、いない学校もあるので一般化はできません。また、これらの統計調査も知る限りでは行われていないと思います。なお、美術館との協働で公共施設のデザインワークショップを授業のなかで行うケースもあります。

甲斐崎:質問者さんの言う通り、イエナプランのワールドオリエンテーションでは、探究のプロセスやアウトプットの段階で、言語以外の表現が盛んに取り入れられています。しかしながら学習課題は個別にあるため、軽重はあります。取捨選択も学習者に委ねられています。要するに、表現方法の技術習得を目的にはしていませんから、表現方法の技術習得も各学習者の探究のプロセスにあって、何をどこまで習得するかは学習者が決めるということです。学習者の要求としてその機会を最大限提供できるようにグループリーダーはしていると思われます。

 

Q:イエナプランについて、学校によってアレンジをかえることのメリットデメリットはなんでしょうか?

原田:オランダのイエナプランスクールをいくつか見て思うのは、学校によって変えているというよりは、結果的に変わっていくのではないかということです。それは、決まったやり方に先生たちがはまっていくのではなく、先生たちの個性を活かしながら、対話しながら、子どもの実態を見ながら、それぞれの学校のあり方が生成されるからではないかと思います。そのあり方のメリットは、先生一人ひとりの良さや個性が生かされること、柔軟に変容していけること、デメリットは、校長先生や教師の意識によって、学校のあり方の振れ幅が大きいことではないかと思います。

 

Q:探究をそそのかすとは具体的にどのようなことをするのですか?

甲斐崎:やや誘導的にファシリテートするということです。イエナプランでのグループリーダーは、すべてを子どもたちに委ねているわけではありません。学習に対してはしっかりとしたプランをもち、子どもたちの学びを望ましい方向へ向かうよう促しています。ただし、それを子どもたち自らその方向へ進んだかのように布石を打ったり、仕掛けをつくったりします。ここらへんのところをもってして「そそのかす」という表現を使いました。2つ下の質問の原田さんの回答を参照してください。

 

Q:各国の日々の宿題の量、宿題に対する考え方はどうでしょうか?

藤原:アメリカは平日の宿題は小学校高学年から多くなってきます。中学・高校になるとさらに多くなり、かなりの負担になります。一方で金曜には宿題がなく、公立は3か月弱の夏休みも宿題はないところがほとんどかと思います。個人的には本人が決めた宿題でない限り、本人のペースに合わず無駄が多いことに加え、子どもの貴重な自由時間を奪うこと、親の宿題への関与の有無が成績⇒格差を広げる要因にもなるので反対です。アメリカでも宿題は問題となっており、オバマ政権の時に、宿題の量を減らすようにと通達が出されましたが、現場では実質的に家庭学習に頼ってしまっている部分もありなかなか転換するのが難しそうです。

梅田:宿題に関しては、地域や学校、もっといえば先生レベルで多様なやり方が存在し、「これ」といったものがありません。私の観た主観の限りでお答えすると、一般的には日本より少なめに感じます。また土日や長期休みには宿題が出ない傾向があります。なぜそうなのかを色々な先生に訊きましたが、皆口をそろえて「休みって、休むためにあるんでしょ?」とのこと。ここでも彼らはシンプルなデザインを体現していますね

甲斐崎:イエナプランスクールには宿題はあまりないです。でも出るクラスもあります。でもそれは圧倒的に少ないです。そもそも家庭での学習なのですから、やるやらない、やるとしたら何をどの程度やるかなど、当然家庭に決定権があるはずです。学校から出された一律に同じ宿題など、すべての子どもにとって有効であるなんてあり得ないことです。さらには、授業中にやり切れなかった分が宿題になるなんてこともよくありますが、そんなのは単なる教師の怠慢だし、無能さをさらけ出しているようなもんです。即刻、授業中にやってくださいって言って突き返してやりましょう。宿題とは、学習者自身が必要と思ったときに、学習課題、内容、方法等を自己選択・決定し行うものです。私自身は、小学校のうちはたっぷり遊んだり、家族と一緒に過ごしたりするのが一番の学びだと思います。これも宿題。

 

Q:何かを考えたり、探究するためには、自分で、課題や問いを設定することが必要になると思うのですが、それぞれの国ではどのようにしてそれを学んでいくのでしょうか?

藤原:アメリカの場合は、子どもに「あなたはどう思うか?」「あなたはどう感じたか?」とまず聞きますが、その中に問いや課題設定が含まれます。ただ、「問い」に限定せず、思いつきや仮説のようなものもその中に入ります。学校では、たくさんの質問をすることが奨励され、「Good Question!」と沢山ほめてもらいます。

梅田:フィンランドの学校ではテストは一般的にどの教科でも(数学も理科も音楽であっても)エッセイ(小論文)形式で行われることが多いです。そこでは、絶対的な知識を求められるのではなく、一人ひとりがどう思うか、なぜそう思ったのかを求められ、結論に至る思考プロセスを重視して評価されます。また、ポートフォリオ教育が行われているケースが少なくなく、そこで子供たちが各々の物語で一年間を学ぶように(そしてリフレクションができるように)デザインされています。このように普段から子供たちは自らの問いについて自然に求められる環境で学んでいます。

原田:イエナプランでは、子どもが前のめりになるような、ついつい知りたくなるような環境設定を「子ども学的環境」と呼び、その環境設定を大切にしています。例えば手に取れるところに興味を引くようなものを置いたり、知りたいと思った時にすぐに調べられるような環境にしたり。また、子どもから良質な問いを引き出すために、教師が子どもたちにどんな質問をしたらいいのか、教師たちが常に探究することも求められます。

 

Q:お金の教育はどのようにされていますか?

藤原:アメリカの場合、学校内での授業もありますが、友達と一緒に道端や公園などで、レモネードを売ったりします。また小学校のころから寄付活動が盛んで、たくさん本を読んだり、たくさん走ると寄付額が増えるイベントや、学校内で何かを売って、集めたお金を寄付する機会が多く、催しのようになっています。寄付先は自分たちの学校、地域の病院、海外で困っている子たちへの寄付などまちまちです。公立は自分たちの学校への寄付の機会が多いです。

梅田:授業内で行われるお金関係の授業は当然あるとして、日本で一般的に知られているのは、書籍でもよく触れられる中学生時に行われる就業体験だと思います。これに加え近年は、小学生向けに起業家と学校、官公庁が連携して実施している、もはやお金の教育というよりは経済視座で学ばせる起業家精神教育が行われています。ここではICTやゲーミフィケーションを取り入れられており、簡易的ながらキッザニアのような施設で楽しみながら学べるデザインがなされています。また、20年以上前から、ひとつの軸をもってプレスクール(就学前学校)から高校まで発達段階に応じて学ぶ起業家精神教育(entrepreneurship and enterprise education programs)を実施しているような積極的な地域もあります。

 

2回目は、下記のようなご質問に対して回答しました!

質問への回答その2「オランダ・フィンランド・アメリカから学ぶ教育の未来」

Q:他国の教育を比較し逆に日本の教育はどこがよいと感じますか?

Q:教育にPCやタブレットが取り入れられたことのメリットとデメリット

Q:日本の教育におけるシステム(制度上)の課題について思うことを教えてください。

Q:自立した他人を尊重するということが大切だと思いますが、日本における人間関係において、会社でも、地域でも、親子でも、支配・被支配という関係性が、これらの教育の実現をさまたげるように思います。日本でこういった教育を実現するために、親の価値観をどのように変えていったら良いでしょうか?

Q:固定的な質問だと思うのですが…。「やらない子」に対する対応をもう少し知りたいです。

Q:「日本の公教育が大きく変わっていくために必要なこと」は何だと思いますか。

Q:儒教の国日本で、イエナプランやフィンランドの教育はどのようにとり入れられうるのか

 

<お知らせ>

梅田先生が、フィンランドの話をじっくりしてくださる機会があります。ぜひご参加ください!

3月16日 ーフィンランドに学ぶ教育の未来ーフィンランドのお菓子つき
http://finland-edu.peatix.com

3月23日(金)現地の教育ってどう?子供に直接聞いてみよう―フィンランドに学ぶ教育の未来 part2― 【現地の親子と一緒に対話】

https://www.facebook.com/events/600639240276143/

イエナプラン関連の情報はこちらから。今年の夏にオランダ現地の研修があります。

オランダ現地で、1週間の研修、3ヶ月の研修を予定しています。
http://news.japanjenaplan.org/?eid=59

佐久穂町で、2019年に開校するイエナプランスクール設立準備財団の情報はこちらから
http://sjsef.jp/

Learning Cretor’s Labの母体となるこたえのない学校では、小学生中高学年向けのプログラムの募集中です。